ルーク・ウィリアムズには父親が三人いる。そのことはプライマリースクールのクラスではよく知られたことだった。
父兄参観では毎度違う父親が来るし、面談でも違う親がくる。顔形はよく似ている男たちを、彼は父親だと呼んでいる。それを揶揄するクラスメイトもいたが、彼は困ったように笑うばかりだった。
(……あ)
自転車を走らせていると、ウィリアムズがいた。きらきらと金髪を太陽の光に光らせながら、彼はボールを持っていた。煮詰めたキャラメルよりは鮮やかな金髪の彼を囲むように、くすみがかった金髪の男性が三人。それで理解した。ああ、と。休日の父親たちとバスケをしているのだろうと。そう言えば、彼は真紅の鷹のペンを持っていたな。きっとバスケットボールが好きなのだろう。
ストリートバスケ用のコートにいた彼は、三人いる父親たちとバスケットボールをしていた。パス、カット、パス、ドリブル、スリーポイントラインからのシュート。ぱすん、とリングのネットが揺れる。男たちはあからさまではないが、子どもに合わせているのだろう。手を抜いているだろうに、息子には上手いぞ、と褒めている。
ウィリアムズが何かを話したらしく、ひとりの父親が彼を肩車する。そのままゴールに向かって走るものだから、なんだと思ったらそのままウィリアムズがシュートを決める。その様子を見て、ああなんだ、と理解する。わかる。ダンクシュートはやってみたいもんな。
リングを掴んだままのウィリアムズをそのままに、肩車をはずした男は大きな笑い声――それこそ、それなりに離れた自分の元まで聴こえるほどの声で笑う。足元を支えてくれる人がいなくなり、慌てたようなウィリアムズを一番しっかり着込んだ男が支える。そのままリングから手を離したウィリアムズをすっぽりと抱えると、男はなにやら笑い声の大きな男に向き直る。小言の一つでも言っているのかもしれない。まあ、これだけ離れていると聞こえないのだけれども。
……そろそろ帰らないと。うちの両親は時間にうるさい。友達の家族を見ていて時間が経っていました、なんて言おうものなら何がくるか分かったものじゃない。
ウィリアムズをストリートバスケコートで見かけた翌日。日曜の礼拝を終えて帰る途中、彼をまた見かけた。まあプライマリースクールにバスではなくて同じ徒歩で向かう組なので、活動範囲がかぶることなんていくらでもあるだろう。
今日は一番人好きのする父親らしく、よれたシャツを着た彼がマークスさん、と笑いかけてくる。父親と手を繋いだままのウィリアムズも礼拝の帰りかと尋ねてくる。そういえば、この二人は礼拝で見たことがないけれど、きっとそこまで敬遠ではないのだろう。まあ、そんな私もそこまで信じていないのだけれど。
帰りだよ、と言えばそうなんだ、と帰ってくる。どこかに行く途中だったらしく、すぐに私たちは別れたから、彼らのその後のことは知らない。どうせ、明日もスクールで会うのだから、別にしらなくてもなにも問題は無いのだった。