title by OTOGIUNION(http://otogi.moo.jp/)
「随分とセクシーだね? 私のために着てくれたのかい?」
「あら、どうかしら。おしゃれだとは思っているわよ」
「そうだね。グリーンは君を一番美しく魅せるから、とても似合っているよ。それを最初に見たのは私なら、尚いいのだけれど」
「安心しなさいよ。下着屋の店員さんにだって見せてないわよ」
濃緑のレースが美しいブラジャーを指差しながら微笑む絢瀬に、それならよかったよ、とヴィンチェンツォは微笑みかえす。
天井照明を落とし、橙色の間接照明だけつけられた部屋は、綺麗に整えられた白く清潔なシーツを、うっすらと夕日色に染めている。
絢瀬の寝巻きを脱がせながら、ヴィンチェンツォはどんな気持ちでこれを買ったのか、と問う。よほど気に入ったのか、と絢瀬は彼の寝巻きのボタンを外しながら、素敵なデザインだと思っただけよ、と顎髭に口付けを落としながら返す。
「それだけかい?」
「それだけじゃない、かもしれないわね。どうだったかしらね?」
「素敵なデザインだよね。既製品なのに、君のために用意されたみたいだ」
「ふふ。なんなら、これセール品だったわよ」
「素晴らしい掘り出し物だね。あんまりにも似合うものだから、私はくらくらしそうだよ」
「あら、くらくらしちゃうほどだったの? それじゃあ安全を取って、今日はやめておく?」
「ひどいなあ。君を爪の先まで食べたくて、我慢ならない私に『待て』をさせるのかい?」
とんでもないプリンチペッサもいたものだね。
絢瀬の細い肩に鼻先を埋めながら、ヴィンチェンツォは彼女の身体を抱き寄せながら、白く薄い肩を甘噛みする。はむはむ、と軽い力で食まれるのがくすぐったいのか、彼女はパジャマを脱がせられないわよ、とがっちりとした腕をとんとんと叩く。
名残惜しそうに離れたヴィンチェンツォの口に触れるだけの口付けを送りながら、絢瀬は彼の寝巻きをシーツの上に落とす。惚れ惚れするほど鍛え抜かれた身体を見るたび、絢瀬は何度も素敵だなと思ってしまう。
とはいえ、上も下も自分だけ剥かれている状態はつまらないもので、絢瀬は寝巻きの下衣に手を伸ばす。緩くなったゴムのウエストに指を引っ掛けて下ろすと、ヴィンチェンツォは立ち膝の辺りで止まった下衣を邪魔だと言わんばかりに脱ぎ捨てる。
「相変わらず素敵な体よね」
「ふふ、君に素敵だって思われたいからね。いつだってかっこよくありたいのさ」
「ここを硬くしながら言われても、少し反応に困るわね?」
「おっと、紳士的なつもりだったんだけどな」
「あら、もう頭から食べたくて仕方ない、って顔をしているのに?」
獰猛な目で見られたらゾクゾクしちゃうわ。
くすくす笑う絢瀬を黙らせるように、ヴィンチェンツォは丸太のように太い腕で彼女を抱き竦めると、噛み付くようにキスをする。厚い舌をねじこまれ、絢瀬はそろりとその舌に自分の舌を絡めていく。
呼吸を貪り尽くすようなキスをしながら、ヴィンチェンツォは絢瀬の背に回した手を動かす。器用なもので、彼女の下着のホックをぱちん、と外していく。支えを失った乳房を照明の下に晒させるように、濃緑色のブラジャーの肩紐を細い肩から滑り落とさせる。
呼吸が苦しくなったらしい彼女がとんとん、とヴィンチェンツォの左腕を叩くのを合図に、彼は彼女の口を解放する。ブラジャーをベッドの下に落としながら、紐なんてセクシーすぎるね、とヴィンチェンツォは絢瀬の腰骨に触れる。
「いけない子だね。こんなにセクシーだったら、私に全身食べてくださいって言っているようなものだよ」
「あら、食べて欲しいから、こんな格好をしたのだけれど。お気に召さなかったかしら」
「今日のアヤセはいけない子だね。そんなことを言われたら、君が嫌だって言っても止まれないよ」
「止まるつもりなんて、最初からないくせに。よく言うわよ」
明日が休みだから、延長戦を申し込むつもりなことぐらい、最初から分かってるわよ。
むぎゅ、と鼻先をつままれたヴィンチェンツォは、お見通しだったか、と口を笑みの形に歪めながら、絢瀬の腰で蝶結びにされている紐を解く。片方を解くだけで、捲れてしまうような下着に、血流が下半身に集まってしまう。
硬くなる相棒にステイ、と念じながら彼は頼み込んで剃ってもらったデリケートゾーンに触れる。くすぐったそうに身を捩る絢瀬を愛しく思いながら、ヴィンチェンツォはそうっと自分しか知らないクレバスに指を這わせる。
「なにを想像したんだい? こんなに濡らして」
「あなたの触り方のせいじゃないかしら。期待しちゃったのよ」
「ふふ、それは男名利に尽きる、ってやつかな。期待にはきちんと答えないと、ね」
「乱暴にされるのは嫌よ?」
「紳士的に君を頭から食べちゃうつもりさ」
だから、またこの下着を着てくれるかい。
そう言ったヴィンチェンツォは、絢瀬の左腰にかろうじてまとわりついている紐を外した。シーツの上に落ちたショーツを追い縋るように、透明な濡れた粘り気のあるそれが秘裂から伸びて、ぷつりと切れた。
確認するように、ヴィンチェンツォの太くがっしりとした指が捩じ込まれて、絢瀬はン、と声をこぼす。
「すごいね、うねってて……食べたくなるくらい、私の指をしゃぶってる」
「ァ、こら……そこ……」
「アヤセがここが好きだよねぇ」
「ねちっこいわよ。あまり気持ち良くしてくれると、また前みたいに落ちちゃうわよ?」
「それは困るなあ」
指でも楽しみたいから、もっと体力つけようよ。
そう笑いながら、ヴィンチェンツォはヘッドボードに用意しておいた避妊具に手を伸ばす。規格外に育った身体に見合う愚息に、薄い膜を取り付けるのも慣れたものである。
あなたが体力おばけなだけよ、と笑う絢瀬の口に触れるだけの口付けを落としながら、ヴィンチェンツォはほっそりした彼女の腕を背に回させる。白い脚を筋肉で覆われた彼の腰に引っ掛けながら、絢瀬ははやる鼓動を抑えるように、分厚い背に回した腕に力を込める。
愛液をとろとろとこぼす蜜壺にあてがわれたそれは、薄い膜で覆われてなお、火傷するように熱かった。