novel
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サンハ=ユアニルの麓にて
肉と魚と土産物と
飯食いに行くぞ。 寝起きの圭太に声をかけてきたのは、ヴォルフガングだった。 街の外は守られないからこそ土地代が安い、と大柄な――筋骨隆々とした金髪の大男・ヴォルフガングと、黒髪の大男・マクシミリアンたちが住む家から少し離れた、サンハ=ユ... -
カナリアのベルカント
バレンタインに愛を込めて
かつての地球に存在したというバレンタイン。それはなんだかんだと続いている。人間というものは、面白いと感じた文化を受け入れていくもので、継承していくものだ。バレンタインは特に日本と呼ばれる地域でひどく発展をした文化であるらしいが、ようは... -
甘い炭酸ソーダのふたり
ショコラ色に染めて
奈々美は百円ショップで迷っていた。というのも、バレンタインに恋人に手作りのチョコレートを贈るかどうか、それが一向に決まらないからだった。 というのも、奈々美の恋人である陸上鷹山(くがうえ・ようざん)は料理が奈々美よりも得意だからだ。具... -
pokemon
花弁に一筆、
ペパーはアカデミー帰りに、チャンプルタウンのスーパーマーケットに立ち寄っていた。今日の夕飯をどうするか考えながら、スーパーマーケットの什器を覗いては歩いて、覗いては歩いてを繰り返して、ぐるっと一周しても夕飯の内容が決まらなかった。常備... -
甘い炭酸ソーダのふたり
花より水よりごはんより
title by OTOGIUNION(https://otogi.moo.jp/) 鷹山くんってチョコレート好き? 奈々美は陸上の車に乗りながら尋ねる。そんなことを聞かれたほうは寝耳に水で、好きでも嫌いでもないが、としか答えようがなかったため、陸上は視線をフロントガラスの向こ... -
pokemon
嫉妬深い恋人の話
アオキは自分の恋人が嫉妬深いことを知っている。恋人が喧嘩をした翌日に食卓で、本音を言うなら女性の同僚といることすら嫌だ、と甘えるように言ってきたことは記憶に新しくはない。もっとも、アオキは複数の仕事を掛け持ちしているから、女性の同僚を... -
pokemon
食べかけのケーキ、飲みかけの酒。
アオキはこたつに姿を変えたローテーブルに足を入れていた。でん、と山、と盛られた薄くスライスされ、油で揚げられたお手製のポテトチップスを前にしていた。塩をしっかりとまぶされたそれは、隣に座るペパーが張り切って作ったものだった。当の本人は... -
サンハ=ユアニルの麓にて
ジェリービーンズとティータイム
誰かが口火を切ると、次から次へと波及していく。風に吹かれて揺れる木の葉のざわめきのように、新たな年を迎えた言葉が流れてくる。 誰かから広がっていく新年を祝う言葉が一通り広まり、それはヴォルフガングとマクシミリアンにも広がる。二人も道行... -
彼と彼女のアジアート
長く楽しく、ちょっと太めに
スマートフォンを触っていた巣鴨は、できたよ、と言いながら仰向けだった身体を起こす。上半身を起こした彼の目の前にはカップうどんの容器が鎮座していた。 向かいに座る晶が、そうか、と言いながら大手メーカーのカップうどんの蓋を剥がす。同じよう... -
ハリエンジュの赤い星
内緒話は誰も知らない
クリスマスのあとは年越しだ。年末年始がダッシュで迫ってくるこの時期は、さすがにイベント盛り込みすぎだろうと呆れてしまう人もいるだろう。それはイブキと名乗る男もそうだった。 チェーン飾りのついたバンスクリップで髪をまとめた彼は、部屋に散... -
彼と彼女のアジアート
クラスの王子様
本条晶はクラスの王子様だった。 過去形なのは、彼女はもう卒業しているからだ。彼女、という事から分かるように、女性だ。それでも、彼女はクラスの王子様だった。もしかしたら、学年の、かもしれない。 短く切り揃えられた黒髪。ショートボブのよう... -
甘い炭酸ソーダのふたり
目を惹いてやまない話
単発バイトで入ったのは、商店街の店先でやる福引だった。一定金額以上の買い物をするともらえる券を回収して、がらがらのあれ(ガラポン抽選機とかいうらしい。まんまなネーミングだ)をまわしてくださーいっていうだけだ。いや、他にも景品を渡したり...