novel
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バディミッションBOND
幸せの底
ルーク・ウィリアムズには父親が三人いる。そのことはプライマリースクールのクラスではよく知られたことだった。 父兄参観では毎度違う父親が来るし、面談でも違う親がくる。顔形はよく似ている男たちを、彼は父親だと呼んでいる。それを揶揄するクラ... -
サンハ=ユアニルの麓にて
スカーレットの色をした朝
マクシミリアン=イルデブランドは鍋を火にかけていた。 特に友人であるドルノ族たちの特有の言語、竜語(ドルンノード)で綴られた書籍の翻訳依頼があるわけでもなければ、製本の依頼があるわけでもない。至って平々凡々平和な日々だ。 季節は冬に入... -
私とわたしの日々是好日
ローズタイム・シャルバート※R-18
こちらの幕間話 柔らかいシーツの海に押し倒され、絢瀬は橙色に光る豆電球をぼやける視界で見上げながら口を開く。 あら、今日は寝かせてもらえないのかしら。そう絢瀬が口にすると、ヴィンチェンツォは寝る前に運動するとよく眠れるよ、と嘯く。 「ち... -
彼と彼女のアジアート
サンセット・ユートピア
title by Cock Ro:bin(http://almekid.web.fc2.com/) 「ただいまぁ」 程よい冷房が効いた自宅に帰った巣鴨は、疲れたよぉ、と情けない鳴き声をあげながら玄関のドアを施錠する。 へにょへにょとした疲れ切った顔をした彼は、トートバッグを抱えて... -
カナリアのベルカント
隣人のジレンマ
title by 蝋梅(https://roubai.amebaownd.com/) 「君が着飾ることをしないで、飼ってるペットを着飾らせるのかい」「こっちの方が再生数高いから……あと、そろそろ動画を上げないとペナルティがくる……」「ペナルティねえ……元々動画投稿は趣味人の行動のは... -
私とわたしの日々是好日
サタデーモーニングの秘密
料理が趣味である、と公言するヴィンチェンツォにだって、料理をしたくない日というのは存在する。 日頃から栄養バランスがしっかり計算されて、目でも楽しめる鮮やかな料理を作っているだけでは疲れてしまうのもあるが、純粋に自分一人に作る料理にそ... -
私とわたしの日々是好日
掌に温度を、あなたに愛を
秋冬と使ってきていたワインレッドのカバーを、初夏に向けてコットンのものに張り替えたのはつい昨日のことだ。二人がかりで生成色のコットン素材のそれに変えて、随分これも傷んできたね、と話していたのも昨日のことだ。 シーズンの終わりにでも新し... -
小さな犬と大きな猫のワルツ
小さな犬と大きな猫のワルツ7
「……そんなことがあったんですよ」「ふーん」「あ、これ話聞いてない返事だ」「職場の休憩時間以外で惚気に付き合わない、って決めてるんで」「そこはちょっとくらい付き合って欲しいんですけど!」「付き合える友達を見つけた方が早いのでは?」「社会人... -
小さな犬と大きな猫のワルツ
小さな犬と大きな猫のワルツ6
たまには温泉気分になろうよ、と雄大が入れた乳白色の入浴剤がよく溶けた湯に浸かりながら、晶は自分の手を見る。日に焼けた浅黒い、変わり映えのしない手だ。 幼い時から晶は女子の中では抜きん出て体格が良かった。母の胎内に柔らかさを置いてきたの... -
小さな犬と大きな猫のワルツ
小さな犬と大きな猫のワルツ5
「マヨネーズを軽く滑らせ……うわっ、ドバッといっちゃった! ……誤魔化せるかな……」「……パンに水分を吸わせないために塗るのが、マヨネーズなんだが」「……明らかにマヨネーズで水分吸ってそう!」 ぎゃあぎゃあと騒ぎながら、食パンにマヨネーズを滑らせ... -
小さな犬と大きな猫のワルツ
小さな犬と大きな猫のワルツ4
「天気もいいし、お出かけ日和だよねえ」「ん」「洗濯物もよく乾きそうだしね。あ、このノート可愛い」「買うのか」「いや、まだノートはたくさん買ったのがあるから……大学時代に……」「そうか」 使い切ってから新しいのを買うよ。そう苦笑いしながら、巣... -
小さな犬と大きな猫のワルツ
小さな犬と大きな猫のワルツ3
「かっこいい、か……」「そう! 妋崎さん……この間友達になった人に言われたんだ。晶ちゃんのかっこいいが分からないと、方向性がまとまらないでしょって」「ふうん……」「ということで! 晶ちゃんがかっこいいって思うことを教えてください!」 目をキラ...