novel
-
私とわたしの日々是好日
lunch 雑談しながら
絢瀬と修子と叶渚(かんな)は休日なのをいいことに、ランチをしていた。職場からほど近い商業ビルに、新しいカフェレストランが入ったのを、新しい物好きの叶渚は耳ざとく聞きつけたのだ。 叶渚の声かけもあり、三人はこうして土曜日のランチタイムに... -
私とわたしの日々是好日
にゃんだふるでいず!
年度始めに仕事したくないね。 そう言ったヴィンチェンツォは、有給を決めていた。そんな彼を微笑ましく思いながら、絢瀬も毎年休みにしていた。誰だって働きたくないものである。 のんびりと朝ごはんを食べた二人は、それぞれ好きなことをしていた。... -
私とわたしの日々是好日
ライスケーキ・シンドローム
ヴィンチェンツォは冷凍庫の整理をしている時、冬の入りにクール便で届いた餅がまだ残っていることに気がついた。 その餅は、名古屋にある絢瀬の実家から届いた餅だ。届いた時の絢瀬が言った、買うからよかったのに、と言う言葉を思い出す。その言葉と... -
私とわたしの日々是好日
スタートライン
ヴィンチェンツォは不貞腐れたように布団にくるまっていた。もっこりと膨らんだ掛け布団を見て、絢瀬は思わずため息が漏れる。 今日は晴天で、できれば掛け布団を干したいのだ。時刻は十時を少しすぎたばかりで、もう起きていてもいい時間だ。休みとは... -
私とわたしの日々是好日
リボンつけた本性
title by alkalism(http://girl.fem.jp/ism/) たまにはこういうのも悪くはない。 ヴィンチェンツォはゆったりと温泉に浸かりながらそう思った。背丈に見合った手足の長さを誇る彼は、なかなかゆっくりとその手足を伸ばして入浴ができない。 手足を... -
私とわたしの日々是好日
触れる面積、愛しさの公式
後ろからヴィンチェンツォが絢瀬を抱きかかえ、その髪に鼻先を埋めるのはいつものことだ。そして、抱きかかえられている絢瀬が、ヴィンチェンツォの片手を遊び道具にするのもまた、いつものことだ。 右手で絢瀬の細い腰を触りながら、ヴィンチェンツォ... -
私とわたしの日々是好日
休日に予定を入れること。君とドラマを見ること。そして、
いやに喉が渇く。 ヴィンチェンツォは手元の水の入ったマグカップを引き寄せる。一口だけ飲むつもりで、思いの外飲んでしまう。 冬だから乾燥しているんだろうな、と部屋を暖めるためにつけているエアコンを見る。湿度計を見れば、やはり四十パーセン... -
私とわたしの日々是好日
ナイトキネマ・アイスクリーム
金曜日の二十時半。この時間にヴィンチェンツォは風呂を出る。黄金色の蜂蜜を濃縮した髪をしっかり乾かして、ブラシで整える。整髪剤で整えていない髪はふわふわとしていて、いつ崩れるか分からないが、どうせテレビを見たら寝るだけなので気にすること... -
私とわたしの日々是好日
コートの似合う季節にて
もふもふしている。それは、服を手に取った絢瀬の抱いた最初の感情だった。 そのコートは襟の部分と裾の部分、袖口にもファーがついていた。ブラウンのフェイクファーたっぷりのそれに、ずいぶんと可愛らしいコートだな、とも思った。 (まあ、買いたい... -
私とわたしの日々是好日
a sensation of happiness
それは、ある年の、冬の終わり、春にはいったばかりの、まだ年度が替わる前の頃の話だった。 ヴィンチェンツォが日本の企業に転職して一年、まだ絢瀬が大学生で、今の企業から内定をもらった頃。入社の日取りや、入社までに自身のスキルを磨いていたあ... -
私とわたしの日々是好日
緑の目をした怪物
さんさんと日差しがさしている。レースカーテン越しに入ってくる日差しは穏やかそのものだ。 白く長い毛足の柔らかなラグに転がって、絢瀬とヴィンチェンツォは昼寝をしていた。すやすやと穏やかな寝息を立てて、ゆっくりと胸を上下させて、穏やかに眠... -
私とわたしの日々是好日
砂糖味のしあわせ
絢瀬は珍しいものを見た、と思った。 朝食の支度のため、絢瀬より早く起きるヴィンチェンツォがまだ寝ていたのだ。額から垂れた、濃いめに煮出した紅茶のような色合いの豊かな髪が、彼の彫りの深い顔を少し隠している。 そ、と髪をかきあげてやり、形...